《剑网3》「北天薬宗」バージョン評価：十年恨怨を了し、新たな天を開く

おなじみの稲香村、おなじみの顔。毎回のバージョン更新、毎回の新キャラクター作成、私たちはここに帰ってくる。

しかし、今回は少し違っていた。十年間、さまざまな方法で叩きのめされてきた董龍が、今回はあなたを重傷を負わせるまで叩きのめす。村の老医師、陳商は、あなたの経脈が尋常ではないと言い、これからは正常に武術を修めるのが難しいだろうと告げる。

彼の前に立つキャラクターと、画面の前のあなた、しかし不思議なことに、どちらも「山あり谷あり」という姿勢を同時に見せる。これまで何百万人もの仲間がこの場所から旅立ったことに比べると、この始まりは、悲惨さと広大さを兼ね備えている。

医者を頼って関外の寒々とした土地へやってくると、思いがけず北天薬宗に入門する。そしてついに、北天薬宗の宗主が、老医師陳商の娘、陳月であることが判明する。一瞬にして、これまで12年間で《剣網3》が作り上げてきた物語が、まるで糸のようにつながり、さまざまな恩讐のすべてがこの場所に集結したかのように思えてくる。

「北天薬宗」バージョンは、斬新な始まりながらも、これまで通りの《剣網3》の特性を受け継いでいる。江湖の風雨の中で、衆生の苦しみと情念の孽の中で、「縁」の物語を語る。そして「縁」という次元は、《剣網3》のゲームストーリーの中で、最も味わい深い部分と言えるだろう。

陳月の前に立つと、驚くことに、江湖を騒がせた「北天薬宗の再建」は、稲香村から始まっていたことがわかる。稲香村で起きた風雨は、プレイヤーがこの小さな村を出て大唐を駆け巡った後も、決して消えなかった。プレイヤーと共に旅をした李開復と秋葉青、そして江湖の夢を追いかけてそれぞれの人生を歩む莫雨と毛毛、彼らはすべて、プレイヤーと稲香村の縁なのだ。

プレイヤー、陳月、莫雨、毛毛。出典：微博@幽雨墨道

そして今、陳月もその縁の一部となった。稲香村が滅亡した後、長い間一緒に過ごしたわけではないが、プレイヤーは確かに陳月の成長を見守ってきた。プレイヤーは、彼女が記憶喪失に苦しみながら、どのように薬宗と自分の出自の真相を求めて孤独に旅立ったかを見ることができる。また、毒人を救う中で、揺るぎない医者としての心を見ることができる。

数々の苦難を乗り越え、ついに《無方制物経》を見つけ出し、薬宗の遺跡である白霜谷にもたどり着く。そして、かつて薬宗の老人の助けを借りて、薬宗を再建する。長い年月をかけ、たゆまぬ努力が、ついにこのバージョンで実を結ぶ。かつては小さな少女だった彼女は、今では一宗の宗主となり、昔のかわいらしさや少女らしい愛らしさは、装いを変えることで、風格と優しさへと変わっている。陳月の過去を知るプレイヤーは、この光景を見て、感慨と安堵を感じるだろう。

少女時代の陳月と、宗主となった陳月

もし、プレイヤーが陳月がこれまで経験してきたことを振り返れば、驚くことに、陳月が北天薬宗を再興した裏には、江湖全体を揺るがす一大事件が隠されていることに気づく。陳月と常に寄り添う長孫笑、洛陽で陳月が《無方制物経》を奪い合った胡審心、どちらも霸刀山庄と武家の世代を超えた怨恨に関係している。また、柳静海が陳月に治療を依頼した唐書雁、そして陳月が諦めていない毒人の治療は、五毒教の分裂と、長年続いている毒人事件に直接つながっている。

そのため、この新バージョンでは、陳月が百廃待興の北天薬宗を再建する手伝いがメインストーリーとなる。そして武家と霸刀、毒人と五毒教といった事件は、北天薬宗の再建によってプレイヤーに影響を与え、新たな武林の騒動に巻き込むことになるだろう。

これらの事件を通して、《剣網3》がこのバージョンで表現しようとしているテーマがわかる。それは、怨恨を断ち切り、新たな時代を迎えるということだ。

北天薬宗は、世を救う門派であり、患者を治療することが門派の中心業務である。そして陳月が成長の中で出会った最も深刻な病は、毒人による病であった。北天薬宗の「治」の教えに従い、薬宗の弟子たちも毒人の治療に身を投じることになるだろう。

唐書雁や瑪索などの物語の推進力により、毒人の患いはついに終わりを迎えるだろう。

実際、五毒教がリリースされたバージョン以降、《剣網3》の開発チームは、毒人事件の終結に向けて力を入れていることがはっきりとわかる。なぜなら、五毒教は多くのプレイヤーにとって大切な門派であり、誰も自分の愛する門派が、毒人事件の10年の血債を背負うことを望んでいないからだ。

毒人は、この江湖に数え切れないほどの悲劇をもたらしてきた。この禁術は、最も歪んだ方法で、人間性の中にある愛と温かさを破壊してきた。洛道の毒人村、隠れんぼをする小さな邪子。霸刀山庄の「海天孤鴻」の啞謎、秋葉を待ち焦がれる唐書雁。五毒教の、迷いなく進む孫飛亮、そして強力な毒人である德夯。などなど、枚挙に暇がない。

毒人村で隠れんぼをして育った小さな邪子

そして、このすべてが、新バージョンの「黒山林海」マップと、団本「雷域大沢」で、終わりを迎えることになる。

黒幕である烏蒙貴は、「雷域大沢」の隠しボスとして登場する。今回は、彼は天一教の残りの力をすべて賭けて悉達羅摩と手を組み、これはプレイヤーが烏蒙貴を本当に倒し、天一教を崩壊させることができることを意味する。その後、江湖には新しい毒人は生まれないだろう。

毒神の力を持った烏蒙貴

縁起縁滅、十年の血債は、ついに終焉を迎える。

次に訪れるのは、北天薬宗が新たな時代をもたらす時だ。

これは、《剣網3》が「北天薬宗」バージョンのストーリー構成とゲームプレイのデザインを構築する際に、最も巧妙に考えた部分だ。すでに10年間作り上げてきたキャラクターを中心に、一連の事件を巻き起こし、複雑なキャラクターたちを軸として、彼らが抱える愛憎を糸のように紡ぎ、風雲急変する武林の絵巻を描く。そして、この過程で、プレイヤーの感情も、愛憎の一部として、この大きな変化に巻き込まれていくのだ。

そのため、《剣網3》の新バージョンのストーリー展開は、導入、展開、転換、そして結末に至るまで、メインストーリーによって統率されており、非常に明快で自然な流れとなっている。

「北天薬宗」バージョンは、全体的な構造が非常に優れており、コンテンツの配置が合理的であるだけでなく、「縁」という言葉をしっかりと捉え、《剣網3》というゲームの特性を最大限に引き出している。これは、「北天薬宗」バージョンの最も際立った特徴であり、《剣網3》にとって最も重要な点だ。

そのほか、細部のデザインも、非常に驚かされるものがある。例えば、白河村の老奶奶の、ちょっと強気な東北弁。あるいは、精巧に再現された長白山の大自然など。

しかし、デザイン面で最も興味深いのは、北天薬宗という門派のデザインだ。

北天薬宗は、神農宗を継承し、「北天百草を摘んで巻物に入れ、世に伝えて医術を施し、万民を福澤す」という志を持っており、最も正統な漢方医学の流派と言えるだろう。門派の拠点である長白山は、高麗人参など貴重な薬草の産地として知られており、古くから医道が盛んな土地である。そのため、長白山が中土の寒々とした辺境の地であっても、北天薬宗は、正統な漢方医学をここで発展させてきたのだ。

北天薬宗の門派デザインには、漢方医学と密接に関係する要素が数多く見られる。例えば、薬宗の門派専用武器である「百草巻」は、「神農嘗百草」の伝説から取られており、門派の起源を示すだけでなく、武器本体が収納機能を備えていることも、「北天薬宗の弟子は、まず名医であり、次に武林の侠客である」ということを暗に示している。まさに、医者の心は仁であり、医術は人を殺すためのものではないのだ。

しかし、江湖は危険な場所である。そのため、薬宗の弟子が身を守るための力を持つように、北天薬宗は、珍しい双心法門派としてデザインされている。無方心法は攻撃に特化し、靈素心法は治療に特化している。このようなデザインができたのは、開発チームが伝統的な漢方医学を理解していたからだ。

無方心法を使用すると、「行医忌方」が主な攻撃手段となる。薬宗の弟子は、毒素を使って敵にダメージを与え、同時に敵の体内のさまざまな機能のバランスを乱すことができる。この攻撃手段は、漢方医学の理論にある「薬は三分毒」という教えに基づいている。医者は、広く学識を深め、薬草の薬効と毒性を十分に理解することで、適切な処方を選択し、量を把握することができる。しかし、悪党に立ち向かう際は、毒性の理解も薬理を補助することで、最大限に効果を発揮することができる。

しかし、薬宗と漢方医学が密接に結びついていることを最もよく示すのは、薬宗門派スキルの中核となるメカニズム、つまり「中和」だ。

薬宗のエネルギーバーは、前後に2つに分かれており、それぞれ「寒性」と「温性」を表している。対応するスキルを使用すると、「寒性」または「温性」のエネルギーバーが溜まっていく。この2つのエネルギーは、漢方医学における薬物の性質の分類に基づいている。漢方医学では、特別な場合を除いて、単一の性質の薬草だけを使用することは避けるべきである。なぜなら、病気の治療どころか、かえって害になる可能性があるからだ。

漢方医学は、「中庸の道」を重視しており、薬物の性質が相生相克することを重視する。最終的に調合された薬剤は、正気で穏やかであり、誰もが効果的に吸収することができ、人体の調整もより穏やかで無害になる。そのため、プレイヤーが「寒性」または「温性」のエネルギーを持っている場合は、反対の性質のスキルを使用すると、元の性質が中和され、「中和」効果が発生する。この「中和」効果は、プレイヤーの心法によって、追加のダメージと治療効果が得られる。

「中和」という考え方を門派スキルの核となるメカニズムに設計したことは、開発チームが漢方医学の理論を深く理解していることを証明している。ゲームプレイと理論を密接に結びつけることで、プレイヤーはこの過程で一定の漢方医学の知識を得ることができ、また、薬宗の弟子にとって「中和を熟練して使うこと」が攻撃と治療の鍵であることをすぐに理解することができる。

《剣網3》プロジェクトチームは、北京中医薬大学の中医药体験館を訪れて、体験と学習を行った。

さらに、文化的な側面を抜きにしても、このスキルシステムのゲーム性と操作感は、非常に優れている。温性と寒性の2種類のエネルギーをコントロールし、スキルを組み合わせることで、できるだけ多くの「中和」効果を出す。この手法は、複雑な資源管理を必要とするだけでなく、プレイヤーが門派スキルの効果と特性を理解しているかどうかを評価するものであり、インタラクティブ性が非常に高く、操作する喜びもかなり大きい。

このように、《剣網3》は、本末転倒せず、ゲームを単なる科普教科書にするのではなく、どのようにゲームレベルで漢方医学文化の魅力を表現するかを十分に考慮している。ゲームの第一の要点は面白さであり、次に、その面白さの上にさまざまな表現が加えられる。北天薬宗のデザインは、その微妙なバランスをうまく捉えている。

そのため、総じて、「北天薬宗」バージョンは、《剣網3》にとって大きな前進と言えるだろう。大江湖という枠組みの中で、陳月が北天薬宗を創設するという出来事をきっかけに、17番目の門派が誕生し、毒人と江湖の侠客たちの10年の血仇に決着がつき、江湖は新たな章へと突入した。そして細かい部分においても、《剣網3》は可能な限り面白さと奥深さを追求している。東北文化を取り入れたり、美しい北国風光を表現したりするなど、すべてが完璧に調和している。

北天薬宗は、この新バージョンの中で、単なる新しい門派以上の役割を担っている。それは、《剣網3》という江湖の過去と未来をつなぐ、転換点であり、支えとなる存在だ。漢方医学文化との密接な関係は、北天薬宗に文化的深みを与えていることは間違いない。しかし、それ以上に重要なのは、医者が新たな物語の始まりとなること自体が、ロマンティックで希望に満ちているということだ。

このバージョン以降、より明るく、より活気に満ちた《剣網3》が、プレイヤーを待っている。